石塔山荒覇吐神社秘傳 五百巻之一

㝍和田末吉

五百巻之一 

夫日本國之尋祖主、茲顯邪靡堆國當主阿毎氏之王胤安倍氏之祖。以安日彦爲日本國之建國、成荒覇吐神一統信仰。東日流語部録遺事如件。尚非漢字原書。

建保四年八月二日㝍是
朝夷三郎義秀花押

※以下省略

石塔山荒覇吐神社秘傳 五百巻之百一

祖先の故地山丹大国之事

北斗の流鬼國・日髙國・千島諸國に居住せる民に傳へ遺れるは、西北に山丹と曰ふ國ありて、祖先は黒き龍が白龍なる大河を降りて流鬼國に渡来□□、吾ら及び東日流に住むる人の祖先と□□。山丹に住むる民は如何なる寒凍の地にても狩漁に飢ゆなき神なる天命を授かりし民なり。天運を覚り候□□餘知し地の理を祖人に修得し、茲にその傳を遺しける。文字を以て子孫に諸道を教へ遺したり。是を山丹文字と曰ふ。

山丹文字

等なり。渡島の地民能く是を用いたるも、地民をして常用せるは鳥型語印亦は東日流語部語印なりと曰ふ。山丹國にては西に紅毛人國あり。肌桃色白く、髪つづれ、眼青く、鼻かぎ髙く、背髙し。常日、鳥獣の肉を喰ふと曰ふ。折々流鬼國に来りて白龍河・黒龍河を道とせり。彼の紅毛人が國を東南に黒□人國ありて擴しと曰ふ。

寛政六年八月廿日  秋田孝季

憂国之修

抑々人をして世にあらしむれば、智に更け識に成ずる者は人を人と想はず、己耳大仁に在りけるが如く人に上下を造り、權に從へて應ぜざれば武威を以て征誅す。

亦、權に同じうせる者は獨威を通せむが爲に諸々の策計を謀り、有爲無爲の画策を以て世に評せる惡計間謀に世襲を騒乱せしめて戦乱に至らしめ、民を以てその楯とし屍を山海に殉ぜしむ。勝者は讃美に在り、敗者は如何なる正統にあれども世襲の史に遺れるは善惡の天秤も逆重・逆輕□遺らむなり。

凡そ大宮殿に任ふる者の惡誅奸策に於て、永代に民耳ぞ苦しめるは憂ふる處なり。理は法に敗れ、法は權に攺造さるるまゝ世襲を作爲せしも、末代久遠なるはなかりき。餌満つれば貧困を忘れ、貧窮せば阿修羅となりて、世に十式の掟も無法となりて、人の暮を乱す弱肉強食たる魂をもたざるものの如く、盗奪・生殺是れ、貧しさの故起る過却の實相なり。

吾らが日之本國は阿毎氏を治主と立君せしめてより、荒覇吐の民は一族の同血累にして掟を護り、我ら一族の血統は人の上に人を立せず、人の下に人を□して從ふ因習にせず、人の命を如何なる暮しに業ふ者をして平等を一義に尊びぬ。依て生命を天命に安じ奉じ、生々に安心立命せむ事を旨とせり。

依て茲に荒覇吐君主を奉り、日之本の國は古代に於て榮へたりと曰ふ。人をして正しき理、正しき法も權を得る者にて盲いとなり、是を天誅あるべくは代々を見通せる神耳ぞ知れるところなり。

世に惡なすもの盡きざるが故に、支那にては饕餮を荒覇吐神とて崇拝せり。己れ耳獨進せば人の中に睦みを欠くなく、世に渡り来たるは日之本國の神と人と萬物に生々を流轉せる無上道な□。常に餌満ておごらず貧しきとて道に外走せず、此の國に住むる泰平を乱す者を討べし。

永承五年、日之下訓より

寛政六年五月二日  秋田孝季

山丹國之商易

黒龍が白龍となれる大河、北東に山丹國より流る。この大河に、ひげ鮫・鮭・𩹷の漁あり。古代より魚の道とて流鬼國に渡り来たる安東船、北漁に鰊を求め、亦海獣の皮を狩せるにいでむ。初めは久壽元年六月と曰ふ。

山丹國の商舟は、皮を曲造れる木に張り縫いし、六人乘りの小舟なり。潜速に輕く、風向よけるに羊皮の帆をなせば、日に三十里を航すと曰ふ。流鬼國に着きては、龍綿・細袖毛織なる長羽織、色彩種々なる玉灯をともせる灯器、鏃刃・廣刀・銛・小弓・綱・網・金器・銀器・鉄工諸器・皮衣物・皮帶・馬𩉿・藥等なり。

亦、物交に持歸べくは海獸毛皮・昆布・塩漬魚・干魚にして、文にて交す山丹語印ありき。彼の國にては、毛象を狩りて古人は餌とせしも、虎多く人を餌食とせるも、黄砂嵐に大雪仙に移りたりと曰ふ。

神なる信仰にては蛇神・白女神にて、寒は女神にして暖は男神なり。晝・夜、亦然なり。何れも紅毛國より傳はりたる多し。文字にてはロウオマ語印□□。

寛政六年五月二日  秋田孝季

山丹國古史

大森林擴大なる國、寒冬吐息を凍らしむ。神の眠れる白氷雪の聖地は、地界の果つる海に續くが如し。山丹國の傳説に曰く、日輪の神は宇宙の神王より炎熱を體として授かり、月輪は日輪の光りを受けて陰陽の界を照す神となれり。

その地に生くる萬物は生死を以て逝くる日月を時に數へた□□。一年を春夏秋冬に季節を区し、萬物は各々體を日進月歩に時を受けて、生老病死の□時門を片渉し、ただ進むだけにて一生の命脈を果し了りぬ。

然るにや萬物生々中に子孫を遺しけるは魂魄不死なるが故なり。魂魄は宇宙・地界・水底も自在に到れるが故に、生々の中に身心を修せずば再甦の次世に於てをや。萬物何れの相に誕るや知れずとて、古人は神なる信仰を天然に求めて神の信仰を得たり。

山丹國の信仰にては、宇宙を神とし大地を母として、崇拝せるは女神ビーナスを西王母とし、東より旭日せる日輪を男神饕餮として神話を遺したりといふ。饕餮とは神の告げたるものにして、龍・虎・像・犀・牛・獅子等なる威力を併せたる神にて、世に惡なすもの總てを喰い盡すと曰ふ意趣にて想定せしものなり。神なる貫態に於ては天地水に基くものなり。

宇宙を造り陰陽を造りて生々久遠ならしむ。萬物を生死を以て新生を輪廻せるも、魂魄を不死とせる故に萬物は世に滅せる無し。抑々山丹國の傳ぞ、我が東日流より起りし日之本國創史と同じゆうせる處なりき。

元禄十年九月一日  藤井伊予

流鬼國巡脚記

(※この部分、ページ欠落か)

にて鉄を知るべく創なりき。流鬼國にては海獸を狩りて山丹商人と物交なし、それをして日髙・渡島へも更商せりと曰ふ。

依て彼らが古代なる傳統の神はイチヤルバに祀る海神なり。オシロコマカムイは海と河を往来しその魚體六尺、狐も一呑にせる神魚なりと曰ふ。流水に乘りて流鬼國に漂着

(※この部分、ページ欠落か)

山丹國に遺れる古壁繪

古き世の山丹民の紅色繪なり。今ならヲロシヤ國に存在す。是を書けるは流鬼國の主ダッマヒルの羊皮に書かれる□□。元なる繪にては岩壁に遺りぬ。上繪にて、三萬年前なるものと曰ふに驚きぬ。

寛政六年八月一日 秋田孝季
和田長三郎吉次

弘前縣飯詰之住 末吉再書