杖の友─わすれない
三百六巻─史跡巡見帳

諸國巡脚記留画

東日流六郡誌大要帳

奥州津輕飯積邑
和田末吉

中山 正中山

不動瀧/ツボケ山

耶馬台城跡/小田川瀧

大藏山/十三湊

行来山/飛龍

飽田/八盛

荷薩平/名久井

怒代/吹浦

糠部/松前

大澗/皮打

安泻/佐井

宇曽利/砂泻

日川/光堂

西王母 御寶前 平泉白山神社納灯繪/女媧・伏羲 奉納 荒覇吐神社繪馬 多賀城

姫神山/安日獄

犀川三輪山/白山

膽駒山/大和三輪山

富士山/熊野

藏王山/岩手山

荒磯宮繪馬 奉納 黒川荒覇吐神土像/八甲田山

饕餮 御寶前 石塔山繪馬/玄武 奉納 十三湊濱明神繪馬

天馬 奉納 糠部明神繪馬/河童 御寶前 伊治權現繪馬

立山/味僧盛

日髙 イオマンテ 祭/日髙 カムイノミ 神火

ヌササン 祭壇 日髙 三股神木/イナウ 神代刻木 日髙

ホノリ 地神印 日髙/イシカ 宇宙神印 日髙

コタンチセ 邑家 日髙/ガコ 水神印 日髙

オテナ長主 日髙見/エカシ長老 日髙

福島城跡/金井地底城址

土崎城趾/秋田桧山城址

茶臼舘址/尻八城址

松前大舘跡/男鹿城址

白老/華澤城址

藤崎城址/白神崎

柴崎城址/高舘城跡

厨川柵址/巌手柵址

川崎柵址/黒澤尻柵址

栗原一乃迫/阿津賀志山

會津/白河

羽賀寺/三春櫻 千年木令

塩釜/山王

下貞任山/貞任山

糠部小濱

陸中

糸魚川 奉納 天狗/佐渡

米代川主 奉納 大蛇/最上川主 奉納 大蛙吐青煙

土浦主 奉納 鬼喰/安日川主 奉納 流頭骨

猪湖主鯉 奉納/伊太湖鯰 奉納

十和田湖青龍 奉納/多澤湖主女 御寶前

秋田清水宮繪馬 御寶前 つつが虫/八郎泻人女 奉納 日積寺繪馬

日吉宮 奉納 安日彦王/東尋坊繪馬 奉納 海坊主

日吉宮 奉納 孝元天皇/日吉宮 御寶前 長髄彦王

氷川宮荒羽吐神/唐川城址

湊明神 奉納 鮭/日吉宮 御寶前 安倍安國

浜明神 奉納 鯨/浜明神 奉納 おおよ

濱明神 奉納 おっとせい/濱明神 奉納 あざらし

浜明神 奉納 鱈/湊明神 御寶前 白熊

湊明神 奉納 海氷山/浜明神 奉納 海象

流鬼國/濱明神 奉納 夜虹

千島/角陽國

浜明神 奉納 北牛/浜明神 奉納 久利流族

浜明神 奉納 秋田釜倉 水神祭/浜明神 奉納 氷家 狩小屋

東日流 御寶前 おしら/猿石 奉納 座敷童子

東日流 奉納 ごみそ 神占/東日流 奉納 いたこ 靈媒

日髙 奉納 ぱうち/三吉稲荷 奉納 いづな

中山 役小角墓/中山 奉納 役小角

石塔山 安東髙星墓/東日流 日之本將軍安倍賴良 石塔山之墓

石塔山 朝夷三郎義秀墓/石塔山 厨川太夫貞任墓

石塔山 奉納 安倍安東/石塔山 春季寶前 安倍國東

奉納 安倍賴良/石塔山 奉納 安倍致東

繪画乃釋明

此画集、諸國巡脚折々写書仕者也。亦先者乃画加綴、安一族爲画傳。茲爲子孫史歴抄、永保是可。

吾既八十余歳、此書一期、無次書筆力。依秋田孝季・和田長三郎吉次、會黄泉近逝日。眼不自由震手、筆走不想委、以本巻筆了仕者也。

明治四十三年六月
和田長三郎末吉

思い付くまゝ 後記素作

諸國巡脚留句

和田末吉

於秋田鷹巢

〽はねつるべ
 朝にさわがし
 あけがらす

於秋田八盛

寒波かんなみ
 ぶりこを散寄ちらよ
 海の幸

於秋田土崎

〽もののふの
 歴史榮ある
 蒼龍寺

〽昔より
 海にいでなむ
 船造り

於秋田檜山

〽東日流より
 移りし民の
 城固し

於秋田能代

〽さぎり消ゆ
 白帆にさか
 ごめの群

於秋田白神山

〽神の祖を
 西に仰ぎて
 はづむ山

於秋田鹿角

〽黄金堀る
 唄に遺せる
 尻去澤

於荷薩平

〽みちのくの
 日川みなもと
 安日あびヶ岳

於秋田和田邑

〽夢やぶれ
 朝夷あさひなねむる
 墓寒し

於秋田大平山

〽鷹匠の
 自在に飛ぶる
 狩場鷹

於秋田米代川

安日あび山を
 わきける泉に
 河長かわなが

於陸州淨法寺

〽老杉の
 葉枝に隱る
 天台寺

於陸州西法寺

〽歴史なき
 東にありて
 西法寺

於陸州姫神山

〽地下宮の
 雫は語る
 日下ひのもと

於陸州久慈

餘玉まがたま
 神なる石に
 求め堀る

於宇曽利

寒立馬かんだつめ
 冬枯草に
 かけめぐる

於宇曽利恐山

〽いたこよせ
 逝きける者の
 語り山

於宇曽利濱

岩立いわたつ
 神と佛と
 見ゆかしむ

於糠部

日下ひのもと
 都母つぼの石文
 苔むせむ

於糠部

〽やませ吹く
 寒けき夏の
 けがづかな

於東日流

〽富士に似て
 姿うるはし
 岩木山

於東日流

〽十三のうみ
 歴史を底に
 しづみ貝

於東日流

〽藤崎の
 古事を語るは
 安倍の跡

於渡島

〽もの悲し
 めのこぴりかの
 恋語り

〽黒百合は
 ぱうちの化身
 エカシ説く

〽澄む水は
 アイヌタブーぞ
 日髙湖ひたかうみ

〽千島越え
 常夜白夜じょうやはくや
 領國擴くにひろ

𩹷狩いとうか
 くま神業かみわざ
 月ほぼゆ

〽イオマンテ
 たましいのぼる
 ほしまつり

於樺太

〽クリル族
 我と同じく
 祖々の血ぞ

〽西北の
 海越ゆ山河
 日下のくに

於千島巡航

〽カムチャッカ
 此處ここも日下
 古記にあり

〽イスキモー
 國は無果ぞ
 祖渡そとの道

於満州

〽満達の
 蒙古に續く
 故祖の國

於朝鮮

〽西王母
 白頭山に
 天ヶ池

〽八天の
 古事も香ぐはし
 金剛山

於支那

〽長安の
 白馬の寺に
 土下坐せむ

〽歴史ある
 黄河に入りて
 身を淸む

〽海宮を
 想はす山河
 桂林ぞ

於台湾

〽髙砂族
 首狩る古事も
 夢のあと

於琉球

〽みやびあと
 哀歌遺あいかのこせる
 舞に見ゆ

於薩州

〽薩陽土
 熊襲の流れ
 陸奥想ふ

於日向

〽髙千穂に
 逆鉾祀る
 神代かな

於豊州

國東くにさき
 御許の山に
 祖を愢ぶ

〽大元の
 神を等しく
 御許山

於肥前

〽松浦に
 安倍の累代
 海男児

〽宗任を
 祖先に祀る
 松浦黨

於赤間関

〽六波羅の
 夢は空しく
 辰の宮

於南海道

〽十三津浪
 安東船は
 伊予にあり

於瀬戸

〽大御嶋
 山祇の神に
 東日流繪馬

於出雲

〽東日流をば
 出雲に愢ぶ
 荒神谷

於備州

〽安東の
 衆助に満る
 山陽道

於若州

〽羽賀寺の
 遺物に愢ぶ
 安倍の聲

於加賀

〽犀川の
 古き流れに
 三輪の山

〽白山の
 毗畔をただせば
 西王母

於大津

〽神佛の
 御山を映す
 うみの朝

〽山王に
 夷神と祀る
 荒覇吐

於山城

〽京役を
 賜へし古事は
 御所にあり

〽東日流をば
 鬼門に定め
 歴史閉づ

於大和

〽耶馬台の
 古事をひめにし
 三輪の山

於北膽駒

〽北膽駒
 恨みも久し
 とみの里

於朝熊

〽實季の
 やるかたなきや
 佛道ほとけみち

於坂東

〽荒覇吐
 楯なす坂東
 富士の山

〽安倍川を
 古事の堺と
 人知らず

〽武藏野に
 今も鎭まむ
 荒覇吐

〽道しるべ
 古事なき江戸の
 あさぼらけ

〽鎌倉に
 空しく敗る
 和田の塚

於白河

一山ひとやま
 百文價ひゃくもんか
 堺國くにさかい

於相馬

〽將門を
 愢びてきそふ
 馬くらべ

於多賀城

〽めけるなく
 あらはばき神
 これにあり

於和賀

〽黄金山
 護りて今に
 のこ一族たみ

於遠野

〽南部駒
 遠野に在りて
 金と成る

於酒田

〽西東
 酒田の湊
 市を爲す

於越州

〽勝もせで
 比羅夫の傳記
 史書に勝つ

於膽澤

〽田村麻呂
 佛を布して
 征伐史

於伊津

〽田道をば
 蝦夷討つ古事に
 仕立てあげ

後想

俳界に学もなく、思い出づるまゝ遺し置くも、輕笑ありて然る可。ただ名句なきも、浅學に免して客許を願ふ。

了言

杖の友、三春様より百柵を戴き、本巻を以て總て了筆せり。老令盡して、あとは逝くのみ、悔ぞなし。

明治四十三年十月一日
末吉