東日流六郡誌 巻不明、断片史料

末吉再書花押

序書

總てに悠久なるはなし。以て天上無窮たるはなし。富士の𡶶とて崩ること久しければ、今なる雄姿ぞ遺るは難し。遺る遺らざるは時にして、日輪とてもいつしか光熱の止まるに到るなり。歴史は移り、かた時に逆らふて覚つものなれば、記録僞なれば價もなし。

依て、本巻の編に諸國を尋ね巡脚せること三十余年にて綴るとも、金剛ならず。以て、後世の識者に攺訂あらば委ね、老婆心乍ら筆を東日流郡誌全を以て論着仕る者なり。

孝季印押

依て右序書の段如件。

明治四十四年再筆 末吉合掌

再書 東日流六郡誌 天地水之要歴

寛政庚申十一年記より、明治辛亥四十四年了記

古代總序

〽君が代は 登美の小川の 水澄て
  千歳をふとも 絶えじとぞ思ふ

〽日之下の 民を治むる 耶馬台地
  三輪の箸墓 荒覇吐の王

〽三輪山を しかも隱すか 雲たにも
  情あらなも 隱さふべしや

〽祖の國 護るに難く 東日流野に
  水穗を植えむ 耶馬台の民

〽金色の 砂を採むる 荒覇吐
  海の外なる 民を併せむ

〽神とはに 天地水とぞ 崇みなむ
  民を睦みて 國を日髙見

〽忘れまず 衣の舘を 想して
  怒を越えて 益を先たれ

古くは耶馬台國を築きて國造り、日向の侵敵に國を侵され、一族を挙げて北辰みちのくに落着なし、ホコネ黒米・イガトウ白米の稻を耕作なし、地の民を併せて荒覇吐王國ぞ興しける。耶馬台族は荒覇吐族とぞ號けて、奥州・羽州・越國・坂東を併せし日髙見國を創り給へきは、古代なる日下王の創なりと曰ふ。

抑々、奥州の民は支那太古なる黄土下に埋む故地ぞ故國にて、世に是を紋吾呂夷土民と號す祖人なり、と曰ふなり。幾萬年前、天地水の環異りて、春夏秋冬の季を異にし、永く冬間の季節耳ぞ一年の半期を占めたり。依て、支那人祖の故地に生々保つ難く、暖地を求めて移りし民、亦、氷雪・異寒の期去りて残れる民も亦、故地を去るをやむなきにいたるなり。

卽ち寒冷去りし故地なる大地に、亦異変起りぬ。表土深けく凍結せし大地、解けにして地表土、粉塵となりて季風に飛塵して、草木不毛たる砂石地を廣げむ。依て亦、故地に飛塵の降砂常にして、支那なる古人の住むる故地ぞ、年毎に埋もりて止まず。北風の風嵐に吹く降砂塵、支那秦嶺山連𡶶に飛途を閉がれ、降砂せる塵ぞ、黄土と曰ふ。その積土、現世にて計れる積量ぞ、一千尺より三千尺とも曰ふなり。

かくして、人祖を育ましめたる故地なるは、その底に埋り、祖人は生々安住の新天地を求めて、故地を東西南北に移りける。わが國なる民族の祖ぞ、この黄土下に埋れたる處ぞ祖國なり。奥州の土民ぞ、吾が國の最古なる民祖にして、是を阿蘇辺族と稱したりと曰ふなり。卽ち、現世に領國をして世界に分布せし民族に、紋吾呂夷土族より移住せる國を挙ぐれば、朝鮮のクヤカン族・黒龍大河北方國なるツングウス族・北極なるエスキモウ族・クリル族・北米國なるアメリカンインディアン族・南米なるマヤ族・インディオ族、そして吾が國の祖先みなながら、累血の人祖ぞ同じなりと曰ふ。

現世にては、九州なる日向の髙千穗山に、天上の髙天原より降臨せし天孫を、日本國天皇の皇祖とて宣布せし歴史ぞ、信じるに足らざる架空幻想の傳なり。亦、日本國八州ぞ、伊柵那岐尊が天の浮橋にて天のヌノホコにて下界をかきめぐらし揚げたるホコ先より雫くる滴粒ぞ、神州なれと曰ふもまた、荒唐信じ不可る傳説なり。

今をして、髙千穗山なる𡶶に逆ホコを祀るや、民心に固く信心を保つるぞ、悲しき。

〽雲にそびゆる髙千穗の 髙い嶺颪に草も木も なびき伏けん大御代を 仰ぐ今日こそたのしけれ

明治の小学校、紀元節とて歌はしむぞ、まさに民の平等を欠くる非文明なる洗脳なり。

吾が國の王國は耶馬台國に創り、その初代を耶馬止彦と稱し箸墓に再葬されしを以て王租とせるは、歴史の歩みは眞實なり。是ぞ支那古書、職貢圖巻・魏志倭人傳・宋書倭之五王傳・鮮卑書らに記ありぬるも、さだかなるはなけれども、東日流に遺りける語部録に明細せるこそ眞實なり。

吾が國の成れる創は、古きは奥にして次なるは西國なり。支那より吾が國に移り来たるは、支那黒龍江より北東に川を降り流鬼國に至り、更にには日髙・東日流・日髙見國への渡来なり。太古に船を造るを不□れば生半皮袋を用いたりと曰ふ。

生半皮の図

支那にて是を半皮筏子ヤンピファズと曰ふ。今にして、黄河・黒龍江・揚子江辺なる民族用ふを見る。

紋吾呂夷土とは、黄色なる肌の人種を曰ふなり。支那にては人祖發祥の地なるも、黄土下に埋りて、ときをり大雨後の黄河畔に、古代なる大猿に似たる頭蓋骨見付くること暫々なりと曰ふ。卽ち、祖人の遺骸なり。

人間、もとより萬物生々の一生物なれば、地球誕生以来、天なる光熱と地なる物質、化合・化生に生命體の分岐成長とて、進化せし萬物生命のなかより、永きにわたり母なる海より陸生進化せし動物のなかより、ネズミの如く小さき小動物より猿類に進化なしける、人祖となるべきの進化とは四百萬年を經て、更に人類とて猿類より完全分岐なし、その成長にては百萬年に足らずと曰ふ。

依て、人類は生々子孫を育むべき適生地に移り、更に進化を遂げたるは、地の風土に適生得べき體質に、體種を変異・進化せり。卽ち、肌白き靑眼の紅毛人、亦は肌黒き黒人、肌黄色なる吾等の祖は卽ち紋吾呂夷土民にして、古代にこの地に渡り来て、定着せしは吾等が祖先なり。

卽ち、宇宙の星雲・星の誕生よりその歴史は浅けれど、人類とは、かくして世に顯れたるものと覚つべし。萬物、進化・生長のなかに、人類のみは萬物生長より速やかにして、智能ぞ今や宇宙の誕生までも覚つに至り、亦、心の安らぎとて信仰を以て安心立命の哲理までも、人生の生死に求道を求め、世に會ふ累代の人々ぞ、遺したる遺跡は世界諸國に遺らむ。古代紅毛國なる信仰に於てをや、支那にては史記をして説くるに、アラビアにては既にして神なる意識を宇宙に求めたるあり。

五千年前にエジプトなるナイル河畔に遺れるピラミッドに傳はれるは、原始の水より生れたる女神ヌウトを宇宙創造の神とて祀り、亦南米なるチチエン・イツア遺跡カシテイヨを祀りたるは、神なるを宇宙に求めたる創なり。

紅毛國なる古代信仰にては、トロイ史イリヤス傳記、ギリシヤ史ホーマのイリアッド、亦はオデッセイ叙事詩、ユダヤにては旧約聖書ら、宇宙に神を求めたる巨大なる遺跡ぞ今に遺れむなり。なかにも古きを愢ぶるヒッサリックの丘にては、古代紅毛神殿あり。是に卽して南米マヤ黄色人なる遺跡にては、是におとらざる宇宙に求めたる信仰を求めたる跡ぞ、今に遺れりと曰ふなり。

われらが日本國にては、古代にアラバキ信仰あり。天なるイシカ、地なるホノリ、水なるガコを神とて祀るも、三輪山箸墓大神は、天然自然を神とて崇む信仰の創めなりと曰はれむ。膽駒山信仰も、是の如し。古代に三輪の安日彦、膽駒の長髄彦を國主たる世を耶馬台國と稱せり。ときなる神の信仰ぞ、荒覇吐神崇拝と曰ふなり。

耶馬台國とは倭國にして、築紫の熊襲族・山陰山陽の出雲族・南海の髙砂族・倭の耶馬台族・能登の越族・坂東の日髙見族・奥州の麁族・熟族ら、百八十餘國に國主を爲せるを束ねたるは、耶馬台族王なりと曰ふ。

この古代治世永く續けるも、九州に日向族起りて、その王たる佐怒王東征にいでまして耶馬台族敗亡せり。依て一族を挙して奥州東日流に落着せしより、東日流古代よりの住民、阿曽辺族・津保化族・日髙族を併せて荒覇吐族となれり。

依て國王と卽位せしは安日彦王・副王長髄彦王なり。卽ち日下王國の創めにて、勢をなして故地を奪回して立君せしは根子彦王なりと曰ふ。倭の三輪山・膽駒山・明日香山三山をして、日下安東將軍、支那にも名髙き將軍なりと曰ふ。

三輪山大神ほか

東日流古代神

天地水の図

吾が日下の古代信仰とは、是の如きなり。亦、荒覇吐神とは古代信仰の原にして、支那に起れり西王母と曰ふ萬物創造の神が鎭む處を、天山なる天池と曰ふ。是を司る神を陽神伏羲・陰神女媧にして、この神なる護神は饕餮・雷神・風神・九首龍ありて、是を併せむを荒覇吐神と曰ふは鮮卑書に遺れり。

支那國に三危山あり。荒覇吐神誕生せし處にて、それより天山なる天池に移り、更には朝鮮の白頭山なる天池に移り、國を造り、更には吾が日本の地・耶馬台國に渡りて、紀州の地に鎭座せりと曰ふ。

荒覇吐神とは、吾が國にては白山比奴神・白神山神・熊野明神・大山神と異稱されしも、荒覇吐神とて正號なり。異稱をせるも世襲の故なればなり。

支那天山ほか

奥州にては、天池に十和田神社を祀るあり。朝鮮にては八天女を祀り、支那にては西王母を祀るも、荒覇吐の神なり。かく日之下に崇拝せらるは耶馬台族にして、東日流に渡りけるは、耶馬台族の落着以来なりと曰ふ。

安日彦王・長髄彦王の次代子孫にては、北方王國の全盛なるときにて、國を西南に併すこと八十六國なり。故地倭國を奪回なし、根子彦を立君せしは日下國分の創めにて、天皇系譜に孝元天皇と遺れるはそれなりと曰ふ。

〽國造る
  安日長髄の
   日の下は
 わがみちのくの
   荒覇吐神

(※以下、判読不能)