東日流内外六郡誌大要 水

修身之書

凡そ人として生を世に受けたるは、五臓八腑を父母に受く耳ならず、人體を構成せる骨肉臓腑みなながら兆億の生命體に依りて、一人なる人體をなせるものなりと曰ふ。

萬物のなかに智能を以て生々せるなかに於て、天に地に水に可能を究め、土石より金銀銅鉄を採造し、亦爆裂の火藥などをも製造可能ならしめ、古代より石刃の打製より、人の智能未だとどまることなし。

天に飛び地に走り水に潜泳せる器物、生物の如く造らるも未だ世に顯れむや、夢ならざるなり。人の脳髄に發起せるもの耳人世を權握せる、慾望また智能に在りせば、人は人を殺生し、生命の尊重なきとき、天命は人身を皆滅すとも曰ふなり。

人は生死の間に、生々安きこと少なく、労々苦悩ぞ多き故に求道せしは、神佛を救世主とて信仰ぞ發起せること古けれど、生々の限り造惡の盡きざる故に、今尚以て神佛を念ずる多し。

抑々、世の創めを尋ぬれば、宇宙に星雲誕生し、星雲より億兆の星誕生し、その陰陽に誕生せる星の光熱に依りて、宇宙なる天體ぞ觀ぜらる。星とて億萬年の生命ありとも、生死をまぬがるるなし。凡そ吾等が地界とて日輪に廻る星なり。ほどよき日輪の距離に位し、陸海を表衣になせる惠を保つが故に、生命の種、誕生し萬物の生々を分岐なして、その生命、子孫進化を以て現代に至りぬ。

依て、吾ら人類とて現世に遺れるも、その種原ぞ水菌の如き微生物生命體より分岐進化せしものなり。人間一生の生命を保つに於てをや、幾兆億の他生命を口中に喰むらずして保たれざるなり。

亦、人間耳が生々に於て衣食住のなかに喰はざるとも、草木を伐り、害ある生物を殺生せるに於てをや、生々のものを殺生せる餘り、その種主遺生を断つたるも多し。

智能の人間、商を覚り、農耕し、鳥獣を飼ふる。人との物交を商ふは、太古より覚りたる處なり。人との流通商ふため、道を通し、山海の産物を互商しけるは、狩猟・漁魚にその産物、人をして生き難きを安住の地に移りき故なり。依て人それを追へ、未智なる山海を渡り移りて、世界に分布す。

然るに、人間の過却にや勢をなせるもの、人の安住を襲へ戦事しきりなる因習の久しきは、今に変わらざるものにて、歴史は勝者讃美に遺して權勢を護らむために掟を造り、平等救済なる信仰に於て洗脳せるさま、世々に盡ざる殺伐の史なり。

然らば人生をして、如何なる治世ぞ望ましきや。卽ち是ぞ、修身の儀を覚るこそ人道なり。吾が東日流の里に名君あり。安倍太郎氏季の養子とて平泉鎭守府より十三湊に迎へられたる、藤原權守左衛門尉秀榮なり。彼の遺訓に曰く、

一、
人みなながら天命に在り。外藩と交ふも、天命に逆くと曰ふことなし。世界人類みな、骨肉の祖を一にせる遺族なり。種性・異習を論ずる勿れ。求めて商道を開き、進みたる智能を學ぶべし。
二、
海洋を渡り、世界に智を求め、諸道・智識を修め、吾ら一族永代の安住を基とせる、生々安樂國を築くを本旨としべし。
三、
地に海に産物異なりとも、永代累續せるなし。依て商道を究め、己が郷なる産物を護るべし。商を志すは、武より農より强くして、子孫の榮智を向上せしむ、人造りに相通ぜるものなり。
四、
海を渡る船、その技なければ難に遇す。農をして稔のみを願ふとも、肥施に技なければ、天候に非ずして凶を作す。上農は草を見ずして草を取り、下農は草を見て草を取る、と曰ふ。
五、
人の睦びは和解なり。先づ以て己が心と和解せずして、他人との和解至らざるなり。諺に曰く、明日を明日をと心に、今日をおこたる心に、富非らず。施せど、犬に草を與へて犬是を喰はず、馬に魚肉を與へど馬是を喰はず、と曰ふ。
六、
人をして善惡とは如何なるものにも存ずる處なれども、一途に石橋を打きて渡る心の固きは、世を睦に欠く貧しき心なり。事に以て、肉を斬らせ骨を碎くの心を修すべし。諺に曰く、佛の面も三度と曰ふ。忿怒はそのときに起すとも、悔あるものは赦しべし。
八、
商道は武農工商、人をして商ふべし。人を、己が商に乘せて商ふは、商の大要なり。すべて商に捨るものなし、と心得て、上は金銀珠寶より下は人糞に至るまで商あり、と曰ふなり。
九、
吾が一族は、外藩に求めて商ふを旨とし、海渡學、造船の技を得術し、その海航ぞ韓土・唐土・天竺までも潮路を交す。亦、産物を仕入るは渡島・流鬼・久里流・神威茶塚國、更には角陽國・白夜夜虹國の氷海に幸を得むとて、常にしてその技を究明せるを商の一義とせり。
十、
吾が一族の商道は、藥物・武具・衣物・佛法諸物・海産一切・材木・金物・土器・牛馬・飼鶏鳥・獸皮・鳥羽・金銀工物・寶珠・干物・塩漬物・書物・紙物・石材・客乘・味料・酒類・塩・惣菜、其他必要さる總てを商ふものなり。依て、諸國に一族の先達を住はせ、その國の出来事に謀りて出荷し、以て倍利を得たる基とす。
十一、
一族のなかに、商を商とせず、主筋を忘却し、己が浪樂・道樂に商利を幽むる者は破縁とす。亦、徒らに偉ぶりて商を欠益せるもの然なり。主筋ありて商荷の流通速かなれど、その業徒らに私あらば、賜閉となりて、商業死する耳なり。
十二、
長保の商物可能なる油・塩・米・穀物の商は人の生々に賣惜しみて昇價を待つべからず。人に流通速かにして商信ありて、その地産の仕入ぞ易きなり。
十三、
船商人は吾等一族の要益なりせば、注間に可能ならざるものまで可能となるべく知識を得よ。是れ十三湊の安東船乘務の一義なり。

右の如く、海交商にては、一族挙げて諸國に通ぜり。依てその商利にて、神佛東日流三大靈場を築き、住人また盲學の者少なからしむは、この道場に學ぶる由と曰ふ。是れ、安東一族の永く護りたる修身の行にて、諸國に一族の住むる大商人を今に遺せり。

荒覇吐神之事

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