記
丑寅日本國史繪巻 六之巻
秋田孝季
奥州乱戦鈔想画
一、
奥州伊治水門に倭將・上毛野田道將軍、兵四千人を卆ひて坂東を越え奥州に侵領し地民の財を犯し、伊治水門に至るや、荒覇吐族一起挙兵して倭軍の陣営せる伊治水門に北軍津保化族・西軍熟族・東軍麁族の三軍、田道の兵を討敗り將軍を斬首す。倭軍、奥州を侵領せるは是ぞ始めての事なりと曰ふも、丑寅日本國の語部録に何事の記行なかりき。依て是の如き倭史は信ずるに足らんや。
二、
倭史の諸史書に蝦夷反乱史とて、三十七年長期戦。坂上田村麻呂の征夷。元慶の乱。天慶の乱。前九年の役。後三年の役。平泉の乱にて奥州平定と曰ふも本州なる東日流に官軍の踏入らざるあり。更に渡島・千島も然なり。
大事たるは丑寅日本國の大王國を知らず歴史の空白に隠呑し、築紫を以て國の肇とせる片しきを本巻は繪師北齋氏の漫畫を歴史の時代に併せて、その教師を仰ぎ様々の考察図の應用とせり。大古より人の生々相変るゝとも、その風俗を世に際めて筆なしけるはいささかも私考勝手たるはなし。繪巻に用ひしは次の如くなり。
- 一、北斉画譜
- 二、豊國年玉筆
- 三、北雲漫画
- 四、北渓漫画
- 五、珖琳漫画
- 六、古帖集
- 七、英勇画譜
- 八、鶯村画譜
- 九、金氏画譜
- 十、萬富麁画
- 十一、文鳳麁画
- 十二、諸國神社繪馬
右を要にして本巻他画載す。
依て各画師に心からなる御禮を申置き、永代の寶とせん。
寛政七年二月一日
東日流飯積邑派立之住人
和田壱岐
第一画
北極星方計
第二画
干満度計
第三画
常季震風計
第四画
鑛𥟩
第五画
施耕
第六画
狩猟
第七画
漁撈
第八画
信仰
第九画
渡海
第十画
國造
北斎漫画より
馬櫪尊神/正八幡大菩薩
以下、北斎漫画よりの転載多数。劣化激しいため掲載省略。
記
右漫画は丑寅日本繪画集に用ひられし原画なり。繪師・葛飾北斉にして御赦蒙りぬ。
寛政三年六月七日
秋田孝季