丑寅日本國史繪巻 十之巻

秋田孝季

石塔山荒覇吐神社

祭文之事

あやにかしこき石塔山に鎭まり座す神々を今宵のヌササンに請迎仕り謹みて吾等御祖やからの魂魄を安んず奉る。

おゝ天なるイシカのカムイよ、
地なるホノリのカムイよ、
わだつみなるガコのカムイよ、
はるけきオリュンポス山なる十二神、宇宙を創り給ひきカオスの神よ、
天空の神なるウラノスよ、
大地を創り給ひきガイアよ、
海を創り給ひきポントスよ、
人を世に造り給ひきプロメテウスよ、
生々萬物を造り給ひきエピメテウスよ、
救済の神アテナ女神よ、
オリュンポス山なる神々の大王ゼウスよ、
コプトの神イシス女神、オスリスの神よ、
日輪と水の神なるアメンラー神よ、
エスライルの神エホバの神よ、
大古なるシュメールの神アラハバキルガルの神よ、
シキタイの神アルテミスよ、
大擴野モンゴルの神ブルハンよ、
波斯の神シブアよ、
天竺の神ヤクシー女神よ、
支那大白山の西王母・東王父よ、
山靼の神トウテツよ、
世々惡なすもの、邪道の魔障幻覚にある邪神魔を誅滅し、吾が本願を叶はしめ給ひきことの由を、かしこみかしこみ曰ふす。

古来より石塔山に成り座ませる神々を總じ奉り、吾が丑寅日本國に住居せる民やからの安心立命を救ひ給ひとこそ、かしこみかしこみも曰さく。

重ねて此の地に祀りし役小角仙人こと神変大菩薩の感得なさしめ給ひき本願本地尊・金剛不壊摩訶如来、その垂地尊・金剛藏王大權現の法力を以て、天下泰平の長久あらんおば法喜大菩薩の全能神通力に降魔を誅伏なさしめ給ふことの由を相謹みて曰す。

アラハバキ
臨兵闘者皆陣烈在前

天地水神祈伝

寛政庚申年九月十九日
石塔山荒覇吐神社
神職和田壱岐

石塔山荒覇吐神社秘行

祭壇造之事

神を請迎せるは先づ以て、幹一本・梢四本・三股のあすなろ木、生ゆる前に平地とし、神木ヌササンとすべし。

壇は三段に造り、上段はイナウを奉りて天地水神の神と爲し、ヌササンの正面にカムイノミを焚く神火臺を造るべし。

供物は、生贄の獣または鳥を檻置きて、祭終夜に神への使者とし、苦しめざる屠殺すべし。供物の類は、山の産物・海の産物・人の耕作産物の三種を献じ、神水は山嶽の萬年雪を用ふべし。

神木三股に餅を供へ、イナウを添ふべし。カムイノミを起す火入は、必ず打火または擦火起火とすべし。カムイノミの臺中にメノコの造りしアラハバキ土像を焼入せるを、コタンエカシの祈りに造りて無上なり。

神像之事

イオマンテに奉済せる神像とは石神なり。宇宙より落下さる流星石をイシカ神、山に木の石となるゝをホノリ神、海や川に魚貝の石となれるをガコ神とせるは古来よりの神像たり。

此の神像たるは、柱六本の三階髙樓を築き、地階に水神、二階に地神、三階に天神を祀りて祭事せり。是の髙樓は大王オテナの住むる處に築きたるは、古きハララヤ跡に遺りけり。是の髙樓に祀れるは石神にして、人の造れるは祀ることなし。

是れをカムイヌササンとて、そのイオマンテは大なるあり。三年毎にコタンを挙して祭事し、神招行事七日七夜を通して行ず。祭事終りての夜は、イシカの神石・ホノリ神石・ガコ神石を掌に拝頂せし者は、神の全能神通力に依りて、死すとも速やかに人身をして世に甦ると曰ふ程に、人はこぞりて終祭の宵に神石を掌に拝頂せり。

此の神石は東日流中山なる石塔山荒覇吐神社に秘藏し、毎年仲秋の満月に各々のコタンより參詣せる老若男女に拝頂さる習あり。人々各々己が諸願を此の神石に祈らむと曰ふなり。

この神石を水に入れにして、その水を神水とて病にかゝれる者に飲ましめては、必ず難病も心に悩めるも安心立命に達すと曰ふ。石塔山に降臨せし流星は、鉄石にして重し。また地神なる木石塊も、亦然なり。水神たる神石は、今は世に生なき古代の生物の神石なり。


流星神石、木石神石、海生神石

此の神は石塔山秘藏の寶なり。古き世に中山外濱に古代人の見付たるものにして、その古きこと壱萬以前のものなりと傳ふるものなり。

此の三神石に神通力のあるは、掌にして異様なる實感あり。病は知らずして全治すと曰ふなり。

唱ふる呪文は次の如し。
オンバラシンバライシカカムイ、ホオイシヤホ、ホノリカムイ、フツタリチュイ、ガコカムイ
是の如く稱ふべし。

了記